トリハス・デ・ナランハ(スペイン風オレンジフレンチトースト)の作り方

トリハス・デ・ナランハ|Torrijas de Naranja

トリハス(スペイン版フレンチトースト)は、セマナ・サンタ(イースター前の聖週間)を中心に、スペイン全土で愛されるお菓子です。フレンチトーストと似ていますが、スペイン版は『軽さ』を特徴とします。古いパンを活かし、牛乳に浸し、卵をくぐらせ、焼き上げる──シンプルながら、その時々の工夫と愛情が詰まった一皿です。今回は、オレンジの香りを活かした版を作ります。オレンジの皮と肉桂(シナモン)を浸した温かい牛乳にパンを浸し、黄金色に焼き上げ、仕上げはオレンジジュースを煮詰めたソースで。温かみと爽やかさが同居する、春の訪れを感じさせるデザートです。.

調理時間: 30分
難易度: 簡単
8人分(1人1~2枚)
地域: スペイン全土(特にセマナ・サンタに食べられる伝統菓子)

歴史的・文化的背景

トリハスの起源は、中世スペイン、特にイスラム統治下のアル・アンダルスにあると考えられています。古いパンを無駄にしない工夫から生まれた『貧者の食べ物』が、やがて修道院で洗練され、聖週間の特別なお菓子へと進化しました。

セマナ・サンタ(聖週間)は、イースター前の一週間で、キリスト教の伝統では肉食が禁じられる時期です。この期間、修道院や家庭ではミルク、卵、砂糖といった『肉以外』の食材を活かしたお菓子やデザートが工夫されました。トリハスはその代表的な一品で、今では聖週間を象徴するお菓子として広く知られています。

オレンジを使用したバリエーションは、より近代的なアレンジです。スペインは世界有数のオレンジ生産国であり、特に春の季節はオレンジの香りがスペイン全体を支配します。オレンジの皮と果汁を活かしたこのバージョンは、セマナ・サンタの春の訪れとオレンジの旬を完璧に結びつけています。

材料(8人分(1人1~2枚)

  • 【パンと浸し液】
  • バゲットまたはパン(1~2日前のやや硬いもの):12~16スライス(厚さ2cm程度)
  • 牛乳:500ml
  • オレンジの皮:1個分(薄く剥いたもの、白い部分は取り除く)
  • 肉桂(シナモン):1本(または小さじ½のパウダー)
  • 砂糖(浸し液用):大さじ2
  • 【卵液と揚げ用】
  • 卵:4個(大きめのもの)
  • 小麦粉:大さじ2
  • 塩:少量
  • 油(揚げ用):適量(サラダ油またはひまわり油)
  • 【表面用】
  • シナモンシュガー:シナモンパウダー小さじ1 + 砂糖大さじ4
  • 【オレンジソース(仕上げ用)】
  • オレンジジュース(新鮮または濃縮):300ml
  • 砂糖:大さじ3
  • バター:大さじ1
  • アガー(寒天)またはゼラチン:小さじ1(ソースをわずかにとろみをつけるため、任意)

必要な調理器具

  • 浅い皿(パンを浸す用)
  • 鍋(牛乳を温める用)
  • 広い浅鍋または深いフライパン(揚げ焼き用)
  • 小鍋(オレンジソース用)
  • ボウル(卵液用)
  • 計量スプーン・計量カップ
  • ピーラーまたは野菜ナイフ(オレンジの皮を剥く用)
  • キッチンペーパー

調理手順

1

オレンジシナモン牛乳の準備: 鍋に牛乳を注ぎ、弱火で加熱します。沸騰させないよう注意してください。オレンジの皮と肉桂(またはシナモンパウダー)、砂糖を加えます。火を止め、ラップをかけて室温に冷まします(約20~30分)。オレンジの皮を取り出します。この時点で牛乳にはオレンジと肉桂の香りが充分に移っています。

2

パンの準備: バゲットまたはパンを厚さ2cm程度にスライスします。1~2日前のやや硬いパンを使うことが重要です。新鮮すぎると牛乳に浸すとボロボロになってしまいます。

3

パンをオレンジシナモン牛乳に浸す: 冷めたオレンジシナモン牛乳を浅い皿に注ぎます。パンのスライスを両側それぞれ数秒ずつ浸します。完全に浸すのではなく、『湿らせる程度』がコツです。浸しすぎるとパンが崩れてしまいます。

4

卵液の準備: ボウルに卵を割り入れ、小麦粉と塩少量を加えよく溶きます。この『卵衣』がトリハスを黄金色に焼き上げ、外側をカリッとさせます。

5

パンに卵衣をくぐらせる: 牛乳に浸したパンを、卵液にくぐらせます。両側を満遍なく卵液に浸し、余分な卵液は軽く落とします。

6

揚げ焼きする: 広い浅鍋または深いフライパンに油を注ぎ、中火で加熱します。油が熱くなったら(約170℃、パンのかけらを落とすとシュッと音を立てる程度)、卵衣をくぐらせたパンを入れます。片面約2~3分、黄金色になるまで揚げ焼きにします。反対面も同じように焼きます。取り出してキッチンペーパーの上に置き、余分な油を吸わせます。

7

オレンジソースを作る: 小鍋にオレンジジュースと砂糖を注ぎ、弱火で加熱します。ジュースが少し濃縮し、とろみが出るまで約5~10分煮詰めます。(アガーやゼラチンを使う場合は、最後に加えて溶かします。)バターを加え、香りと光沢を加えます。火から下ろして冷ます。

8

仕上げと盛り付け: 揚げたトリハスをプレートに配置します。温かいままシナモンシュガーを表面にたっぷりふりかけます。冷めたオレンジソースを、トリハスの周りに、または上に軽くかけます。温かいままサーブします。

盛り付けとマリアージュ

トリハス・デ・ナランハは、温かいままでもぬるいままでも、どちらでも美味しく召し上がれます。スペインではおやつとして、または軽い朝食として食べることが一般的です。この料理教室のコースでは、本格的なメインディッシュの後の『甘い癒し』として機能します。

飲み物との相性: 温かいコーヒーまたはスペインのホットチョコレート(濃厚でとろり)が伝統的です。また、冷たいシェリー酒(アモンティリャード)とも完璧に合います。

このコース料理での役割: ポルスアルダ・バスカのようなセイボリーなスープの後に、このスウィートなデザートが登場することで、食事全体の『リズムと完結感』が生まれます。

地域によるバリエーション

トリハスはスペイン全土で作られていますが、地域によって異なるバリエーションが見られます。

セビリア風(アンダルシア): より多くのシナモンとシナモンシュガーを使用し、濃厚で香り高いバージョン。はちみつをかけることもあります。

マドリード風(カスティーリャ): より『シンプル』なバージョンで、牛乳の浸し液にはシナモンだけ、オレンジは使用しません。

カタルーニャ風: アーモンドパウダーをシナモンシュガーに混ぜることがあります。

オレンジバージョン(現代的なアレンジ): この料理教室で提供するバージョンで、オレンジの皮と果汁を活かした、春らしい洗練された一品です。

実用的なアドバイス

パン選びのコツ: トリハスの成功の鍵は『パンの硬さ』にあります。新しすぎるパンは牛乳を吸収しすぎてボロボロになります。1~2日古いパン、できればバゲットのような硬めのパンが理想的です。トーストしたパンでも大丈夫です。

浸す時間の調整: パンを牛乳に『浸す』というより『湿らせる』という感覚が正しいです。スペインのトリハスはフレンチトーストとは異なり、パンがバリバリの食感を保つことが特徴です。数秒程度で十分です。

油の温度管理: 油が熱すぎるとパンの外側は焦げるが中は生のままになります。中火程度を保ち、ゆっくりと焼きます。170℃が目安です。

オレンジソースのとろみ: ソースにアガーやゼラチンを加えるかどうかは、個人の好みです。加えることで、ソースが『グレーズ』のようなテクスチャーになり、プレゼンテーションが洗練されます。ただし、加えずに『サラサラのシロップ』状のままでも、十分に美しく、また伝統的です。

事前準備の可能性: オレンジシナモン牛乳は前日に準備でき、冷蔵庫で保存可能です。オレンジソースも数時間前に準備できます。パンの浸し焼きは食べる直前に行うことをお勧めします。

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