ケサーダ・パシエガ(カンタブリア風チーズケーキ)

ケサーダ・パシエガ(カンタブリア風チーズケーキ)|Quesada Pasiega

ケサーダ・パシエガは、スペイン・カンタブリア州を代表するデザートです。名前には「ケソ(チーズ)」が入っていますが、実際にはチーズは使わない、不思議な焼き菓子。外はきつね色の香ばしい皮、中はしっとりクリーミー。レモンとシナモンの香りが漂う、どこか懐かしい味わいです。材料は牛乳、卵、砂糖、小麦粉、バターだけ。何百年もの間、スペインの田舎の台所で、おばあちゃんたちの手で受け継がれてきた、飾り気のない、でも心に残るデザートです。クラスの後半、コーヒーと一緒に楽しんでいただくのに完璧な一品です。.

調理時間: 1時間10分(冷却時間含む)
難易度: 初級
4人分
地域: カンタブリア州(パジェス谷)

歴史的・文化的背景

ケサーダ・パシエガは、スペイン北部カンタブリア州の内陸にある「パジェス谷(バジェス・パシエゴス)」という地域で生まれました。この地方は、日本なら北海道の牧場地帯を想像してもらうと分かりやすいかもしれません。緑の牧草地、朝の霧、そして在来の牛たちが放牧されている、酪農が暮らしの中心の土地です。そこで新鮮な牛乳が最も豊富な食材であり、そこから生まれたのがこのデザートでした。

「ケサーダ」という名前は、チーズ(ケソ)ではなく、「乳を凝固させたもの」に由来します。昔、この地方の人々は牛乳を凝乳で固め、水分を切ってリコッタのような状態にしました。それを田舎の言葉で「ケソ」と呼んでいたのです(熟成チーズではありません)。その凝固乳に卵、砂糖、小麦粉、バターを混ぜて、素焼きの土鍋に入れ、薪のオーブンで焼いた。それがケサーダの原型です。

スペインには14世紀に書かれた『良き愛の書(リーブロ・デル・ブエン・アモール)』という中世の詩編があり、ここに凝固乳と蜂蜜を使った菓子の記述が見られます。ケサーダの直接的な先祖かどうかは定かではありませんが、少なくとも中世の頃からスペインで乳製品を使った菓子が作られていたことは間違いありません。レシピは母から娘へ、口承で何世紀も受け継がれ、文字として記録され始めたのは19世紀から20世紀に入ってからのことです。

今日、ケサーダ・パシエガは双子のような兄弟菓子「ソバオ・パシエゴ」とともに、カンタブリア菓子の二大看板として並び立っています。どちらも同じ酪農地帯の牛乳とバターから生まれ、どちらもほぼ変わらない姿で、今も町のパン屋や家庭のキッチンで作られ続けています。

材料(4人分

  • 全乳:250ml
  • パジェス産フレッシュチーズまたはリコッタ:250g
  • 卵(Lサイズ):2個
  • 砂糖:100g
  • 溶かしバター:50g
  • 小麦粉:50g
  • ベーキングパウダー:小さじ1/2(約2.5〜3g)
  • レモン1/2個分の皮のすりおろし
  • シナモンパウダー:小さじ1/2
  • 塩:ひとつまみ
  • バターと小麦粉(型用)
  • 砂糖(表面用):大さじ1

必要な調理器具

  • 丸型または角型(直径18〜20cm)
  • 大きめのボウル
  • ハンドミキサーまたは泡立て器
  • 粉ふるい
  • おろし器(ゼスター)
  • 木べらまたはゴムベラ
  • タイマー

調理手順

1

オーブンを予熱する: オーブンを180度に予熱します。上下からの加熱設定にします。

2

型の準備: 直径18〜20cmの丸型または角型にバターを塗り、薄く小麦粉をまぶして余分を落とします。

3

フレッシュチーズ、卵、砂糖を混ぜる: 大きめのボウルにフレッシュチーズ(またはリコッタ)、卵、砂糖を入れ、ハンドミキサーまたは泡立て器でなめらかになるまで混ぜます。完全に滑らかにする必要はありません。ケサーダは素朴な食感が持ち味です。

4

液体とアロマを加える: 溶かしバター(温かい程度、熱くないもの)と牛乳を加えます。レモンの皮のすりおろしとシナモンパウダーも入れ、よく混ぜます。

5

小麦粉とベーキングパウダーを入れる: 小麦粉とベーキングパウダーをふるいながらボウルに加え、塩ひとつまみも加えます。粉が見えなくなるまで軽く混ぜます。混ぜすぎないこと。ケサーダはふわふわのケーキではなく、密度のある濃厚な食感が特徴です。

6

型に流し込む: 混ぜた生地を型に流し入れます。表面に大さじ1の砂糖を振りかけます。これが焼いたときにきつね色のサクッとした皮を作ります。

7

焼く: オーブンの中段に入れ、45〜50分焼きます。表面がしっかりきつね色になり、指で軽く押して少し弾力があるくらいが完成の目安。竹串を真ん中に刺して、生の生地がついてこなければOK(湿ったパン粉がつく程度なら大丈夫です)。

8

冷ます: オーブンから取り出し、型に入ったまま室温で少なくとも30分冷まします。熱いうちに型から外すと崩れます。人肌くらいに冷めたら型から外し、ワイヤーラックに乗せて完全に冷まします。

9

提供する: ケサーダ・パシエガは室温または少し冷やした状態で食べます。四角く、またはくし形にカット。飾り付けは一切不要。このデザートはそれだけで完結しています。

盛り付けとマリアージュ

ケサーダ・パシエガは、そのままの姿を四角く切り分けて平皿にのせるのが基本です。仕上げに軽く粉砂糖を振るか、地元の蜂蜜をひとかけ。バニラアイスを添える人もいますが、それはどちらかと言えば現代的なアレンジです。

クラスの料理教室では、コーヒーと一緒に提供するのに完璧なデザートです。スペインでは午後の軽食(メリエンダ)の定番で、カフェ・コン・レチェ(カフェオレ)やコルタード(少量のミルク入りコーヒー)と組み合わされます。

お酒と合わせるなら:モスカテル・デ・バレンシアまたはモスカテル・デ・マラガ:甘みと花のような香りが、ケサーダのクリーミーさとよく合います。ペドロ・ヒメネス:非常に濃厚な甘口ワインなので、少量で十分。そして最も伝統的な飲み方:冷たい牛乳のコップ一杯。カンタブリアでは何世紀もそうやって食べられてきました。

地域によるバリエーション

ケサーダ・パシエガは基本的にはレシピが固まっていますが、それでも各地域やパン屋ごとのアレンジが存在します。パジェス谷の一部のパン屋では、生地にブランデーまたはアニスを少し加えて、より大人っぽい香りに仕上げます。カンタブリアの別の地域では、型の底にアプリコットジャムを敷き詰め、ケサーダの真ん中が甘くなるバージョンもあります。

現代のバージョンでは、小麦粉の一部をコーンスターチに替えて食感を軽くしたり、牛乳の代わりに生クリームを使ってよりリッチな味わいにしたりするアレンジもあります。

試してみられるアレンジ: リコッタの代わりに、市販のフレッシュチーズ(クリームチーズタイプ)を使っても近い味になります。生地にアニスまたはブランデーを少量加えると、パン屋のケサーダのような香ばしさが出ます。表面の焼き色を強く出したい場合は、最後の2分オーブンのグリルをオンにしてください。オーブンがなくても、電気鍋(マルチクッカー)または湯煎焼きでも作れます。ただし表面のきつね色にはなりません。

実用的なアドバイス

フレッシュチーズ: 本場のパジェス産フレッシュチーズの味と食感には敵いませんが、日本では手に入りにくいので、リコッタチーズが最も近い代替品です。水分が多すぎるフレッシュチーズは避け、よく水切りしてから使いましょう。

混ぜすぎない: ケサーダはスポンジケーキではありません。ふんわり軽い食感を目指すのではなく、密度があってクリーミーな仕上がりが正解。材料が混ざったらそこで終了。

低温でしっかり焼く: 180度で45〜50分が18〜20cm型の基準ですが、オーブンによって癖が違うので40分経ったら様子を見てください。表面が濃くなりすぎる場合は、最後の15分アルミホイルをかけてください。

きつね色の皮: 焼く前に表面に砂糖を振るひと手間で、キャラメル化したカリッとした皮が生まれます。このひと手間がケサーダのトレードマークになります。飛ばさないでください。

冷ますのがレシピの一部: ケサーダは冷めながら固まります。熱いうちに切ると崩れます。完全に冷まして、理想は2時間くらい置いてから切ってください。

次の日はもっと美味しい: ケサーダは翌日が一番美味しくなります。味が馴染み、食感が落ち着き、よりクリーミーに。室温で布巾をかけて2日、冷蔵庫で4日保存可能です。冷蔵庫から出す場合は、サーブする30分前に出して常温に戻してください。

クラスのデザートとして: ケサーダ・パシエガは、クラスの料理教室でコーヒーと一緒に提供するデザートとして完璧な選択肢です。前日に準備でき、室温で問題なく持ち、そして何より、スペインの家庭の味をそのまま生徒さんに伝えられる一品だからです。

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